ブラシレスモータを自作してみる(製作編)

はじめに

今までモータは購入品を使うだけでしたが、徐々にモータ自体への興味がわいてきました。ついでに自分の用途にぴったり合うモータを自分で作れたらロボット作りの幅が広がりそうというのもあり、作ってみることにしました。

目標

今回作るモータは具体的な用途を決めてませんが、最終的には脚ロボットの関節にダイレクトドライブで使えるといいなと思ってます。したがって、

最高速度:数百rpmとかでOK
最大トルク:数Nm程度取り出したい
重さ:軽いほどいい
相抵抗:小さいほどいい

という感じです。

設計

上記の目標に合うように設計していきます。

モータ設計は全く素人でよくわからなかったので簡易ツールのJMAG Express Onlineを使ってみました。
所属組織のメールアドレスがあれば無料で使えます。

www.jmag-international.com

モータ形状のテンプレートを選んで相数、スロット数、線径などを振ると各性能を計算してくれます。
相抵抗、トルク定数、磁束密度を見ながら適当にパラメータを振って、それっぽい解が得られました。(1Nm/A、相抵抗2.5ohm)

具体的な設計はJMAGの開発元が書いている以下の本を足掛かりにしました。

モータ設計初心者のための永久磁石同期モータ設計入門
https://www.jmag-international.com/jp/book/

あとはJMAG Expressで作った形状を3DCADに移して構造部品を設計して完成です。

ロータはマグネットの吸引力に耐えないといけないのでしっかり目に作るのがポイントです。(1回失敗した)

製造

購入した部品と購入先は

・冷延鋼板 2.3mm (横山テクノ)
https://www.yokoyama-techno.net/detail/646.html

・マグネット 20x10x2mm N40(ネオマグ)
https://www.neomag.jp/shop/shoppingcart/itemdetail.php?itemno=NB02001000211&qty=1

・エナメル線 0.4mm (オヤイデ)
https://shop.oyaide.com/aiw0-4mm.html

・ベアリング/軸(Misumi

です。今回の仕様だと材料費は1台5000円ぐらいだと思います。

こちらの材料をなんやかんや加工してモータの形にしていきます。

ステータ製作

まずはステータ作成のための鉄板加工ですが、幸い自宅にCNCフライスがあるのでこちらを使います。

ステータは市販のモータと同じく薄い鋼板を積み重ねる形で作ります。市販モータは渦電流低減のために積層しているようですが、今回は薄板しか切削できないという製造上の都合のほうが大きいです。
そもそも渦電流低減をちゃんと狙おうとすると鋼板の絶縁処理が必要なようで、家庭だとなかなか難しそうです。

使っているCNCフライスはoriginalmindのCL200という機種で公式に鉄板が切削できる機種ではないですが、細いエンドミルを使えば何とか削れるようです。(切削条件は切り込み0.1mm、送り速度200mm/min) ただ、エンドミルの寿命が著しく短く、せいぜいステータ2枚分しか作れません。この作業が一番つらいです・・・(上が新品、下が使用後) なんとかステータを削り終えたら次は接着です。ステータに接着剤を塗って簡易治具でプレスします。 接着後はこんな感じ。ステータの位置決めもかねて3Dプリンタのハブも一緒に接着しました。 次はコイルを巻いていきます。ステータの上に直でコイルを巻くと角部でショート必至なので、3Dプリンタでキャップを作って保護します。
占積率は下がっちゃいますが、ショートよりはマシです。 次はコイル巻きです。1ティースにつき28T * 36スロットをひたすら手で巻いていきます。
ちゃんと引っ張りながら巻かないと膨らんで線が入らなくなります。巻き終わったらステータ側完成です。

ロータ製作

ロータ側はステータよりだいぶ簡単です。 まずはロータのフレームに鋼板を貼ります。本当は鉄パイプとかを使いたいところですが、ちょうどいいサイズのものが入手できなかったので、鋼板を短冊状に切って使っています。 あとはマグネットをN/S交互に貼っていくだけです。位置決め用にくし歯状の部品を3Dプリンタで作って貼ってあります。これでロータも完成。

組立

あとはステータをロータに入れるだけです。
今回みたいなサイズだと磁気吸引力が強烈なので、指を挟んでケガしないように注意が必要です。 この瞬間が一番楽しいですね。 きれいにできた・・・・

制御編、評価編もいずれ書きます。